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シ ル バ ー 人 材 セ ン タ ー に お け る安 全 就 業 対 策 の 充 実 度 評 価 お よ び事 故 防 止 効 果 に 関 す る共 同 研 究 事 業

ダ イ ヤ 高 齢 社 会 研 究 財 団  研 究 部 長  博 士 ( 医 学 )  石 橋 智 昭

01 はじめに

シルバー人材センターは高齢者に“生きがい”としての就業機会を提供する組織である。
したがって、提供される仕事内容も軽易で短期的なものが中心となる。
軽易な仕事とはいえ、会員の中心層は70歳代後半に移りつつあり、事故防止に向けた安全就業対策は最優先課題である。

具体的には、安全対策推進員による巡回パロール、職域別の技術講習会や年次の安全大会等が開催され、安全対策に優れたセンターに対する表彰制度もある。
筆者も優良センターの選定委員を長らく務めているが、受賞センターには大きな励みになり、気運の醸成にも一役買っている。

 

一方で、研究者目線ではこうした安全就業対策が実際の事故防止にどの程度役立っているのかを知りたくなる。しかし、シルバー人材センターでの事故防止の研究はまだ少なく、安全就業対策の効果検証は手つかずのままである。

02 東京しごと財団との出会い

事故防止効果の科学的検証が進まない理由は、データ整備の遅れにある。アウトカムとなる事故の発生状況は、傷害事故や損害賠償を補償するシルバー人材センター団体保険の実績データがすでに存在し、活用可能である。

 

一方、安全対策の実施状況を全国規模で把握する仕組みはなく、そのデータ化が研究上の大きなハードルになっている。
 

公益財団法人東京しごと財団(以下、東京しごと財団)は、都内58ヵ所のシルバー人材センターで構成される東京都シルバー人材センター連合の指定も受けている。

東京しごと財団では、全58センターから『安全就業にかかる実績調査・相談表』をエクセル(表計算ソフト)に入力する形式で収集しており、その二次利用と共同研究を申し入れた結果、表題に掲げた研究プロジェクトが2023年4月より幕を開けた。
 

東京しごと財団からは、安全対策の実施状況を把握でき『安全就業にかかる実績調査・相談表』と事故データ数を示す『保険適用・傷害事故/賠償責任事故』を年次単位で提供を受ける。データ供与は、個人情報の削除とセンター名を記号化した状態で受け、ダイヤ財団からの分析結果はしごと財団がセンター名を復号化して当該センターにフィードバックする(図表1)。以上の手続きは、倫理審査の承認を経て両機関のホームページ上でも公示した。

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03 共同研究のステップと到達点

共同研究は、東京しごと財団との定期的な協議によって進めていくが、
概ね4段階での展開を想定している。

(1)安全対策の実施状況の可視化
提供を受けた『安全就業にかかる実績調査・相談表』を詳細に検討し、定量的な処理が可能な項目の抽出とその指標化に取り組む。

(2)フィードバック資料の作成
これまで、『安全就業にかかる実績調査・相談表』は、他センターの回答結果までは公表されておらず、比較することが出来なかった。
そこで、各設問の回答結果に都全体や地区ブロックの平均を併記した集計レポートの作成を試みた。
レポートの一部を図表に示したが(図表2)、当該センターの回答が赤字で表示され、相対的な評価がしやすいよう工夫した。現在は集計表のみだが、将来的には注目すべき設問を選定してレーダーチャーを作成し、センターの強みと弱みが直観的に理解できるよう発展させていきたい。

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(3)安全対策の事故防止効果の検証
上記(1)(2)の取り組みを通じて“安全対策の実施状況”のデータ整備が実現すれば、事故防止効果の検証へコマを進めることができる。
ただし、事故の発生状況と安全対策の実施状況を統合したデータベースの構築に向けては、因果関係を明確にするために一定の年次データの蓄積が不可欠である。

(4)エビデンスに基づく事故対策の推進
学術的な分析では東京都全体での検証結果が主となるが、センター単位の分析レポートは全58センターにフィードバックされる。
当該センターの安全対策の実施状況と事故件数の推移を確認し、事故の低減に有効な対策を自ら選択・推進する。
こうした、安全就業対策のPDCAサイクルの定着こそが本研究プロジェクトの到達点であり、その価値観の共有が共同研究のよって立つ基盤となっている。

04 安全大会での成果報告と今後の展開

研究初年度の報告の機会は、都内シルバー人材センターの関係者約100名が一斉に集う「令和5年度シルバー人材センター安全大会(2023年9月29日・於:東京しごとセンター多摩)」で得た。

筆者が『事故防止対策の“見える化”と効果検証への取り組み』と題して、共同研究の目的と到達点、中間分析の結果を紹介した。
会場では、講演後も参加者から熱心な質問が寄せられ共同研究への期待の高さが伺えた。また、ベンチマークの指標として提示した事故発生割合の比較では、都内平均との乖離よりも地域特性の近いブロック単位での比較に関心が高く、今後の分析方針への示唆も得られた(図表3)。

まずは好調なすべり出しとなった研究プロジェクトだが、良好な関係を維持して長期研究へつなげられるかは、価値あるアウトプットをダイヤ財団が提供できるかにかかっている。パートナーとの対話を重ねつつ、ゴールに向けて着実に歩みを進めていきたい。

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