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シルバー人材センターの基礎知識

  • 3 日前
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石橋智昭 シルバー人材センターの前身とされる高齢者事業団が東京都江⼾川区に創設されたのは、まだ企業の55歳定年が主流だった1975年である。同事業団の活動は、「労使間の雇用関係を前提とした高齢者就労ではなく、地域の高齢者が自主的に働こうとする互助と共働のための就労活動を展開する運動」(岩田・山口、1989)であると定義されていた。 この“生きがい就労”とも称される取り組みは、全国的に拡大し、1980年には国庫補助の開始を契機として社団法人化が進展し、名称も<シルバー人材センター>に統一された。 さらに、1986年には「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」により法的根拠が付与され、制度としての整備がなされた。


働き方の特徴と会員の実像

シルバー人材センターの就労形態は、生計の維持を目的とするものではなく、主として生きがいの獲得を志向するものである。このため、就業日数や収入に関する保障は存在せず、業務内容も〈臨時的かつ短期的な就業〉または〈その他の軽易な業務〉に限定されている。関係者の間では、これらの業務を総称して〈臨・短・軽〉と呼称している。具体的には、臨時的かつ短期的な就業とは、月10日以内の勤務を指し、軽易な業務とは、特別な知識・技能を要する業務(例:教授、家事援助、運転、理美容、経理、翻訳等)のうち、週20時間以内の労働時間で遂行可能なものを意味する。

提供される仕事のうち、最も多いのは公園の除草、屋内外の清掃、店舗の商品補充、チラシ配布等の〈運搬・清掃・包装等の職種〉であり、全体の約半数を占める。次いで、建物の施錠、駐輪場の整理、介護・育児等の〈サービス職種〉が続く。一方、現役時代の経験を活かした〈専門的・技術的職種〉や〈事務職種〉の割合は低⽔準にとどまる。市⺠からは、駐輪場整理等が目立つため公共部門の業務が中⼼と捉えられがちであるが、契約⾦額ベースでは⺠間部門の方が多く、⺠間受注の約7割は個人ではなく一般企業によるものである(石橋、2016)。

入会資格は、所在市区町村に居住し趣旨に賛同する60歳以上の住⺠である。会員の約3分の2は男性で、他のボランティア団体やNPOと比較して男性比率が高い。他のボランティア団体やNPOと比較して男性比率が高い。仕事の提供は、センターが企業・家庭・公共団体から請負・委託で受注し、希望会員に再委託する形式が一般的である。この場合、発注者と会員の間に雇用関係はなく、指揮命令権も存在しない。就業した会員には、給与に相当する配分⾦が支給されるが、その全国平均は月額37,470円、平均就業日数は8.7日である(全国シルバー人材センター事業協会、2025)。 なお、紹介された仕事に就業するか否かは会員の自由意思に委ねられており、実際の就業量には個人差が大きい。

事業の停滞と組織の持続可能性への取り組み

国庫補助は、2009年から2012年の⺠主党政権下における事業仕分けにより大幅に縮減されたが、2015年以降は徐々に従前の⽔準に回復しつつある。ただし、その財源には雇用保険料の一部が充当されており、これは高齢者の就業支援および人材育成事業費として位置づけられている。 さらに、週20時間以内の就業制限については、派遣および職業紹介業務に限り40時間まで緩和する法改正が実施された。これらの施策は、シルバー人材センターに対して<企業への高齢者人材の供給>を強く促すものであり、従来の軽易な労務作業に加え、会員の現役時代の能力を活用した業務とのマッチング機能の強化が求められている。

一方、地域課題の解決に資する重点施策として、女性会員の確保が挙げられる。高齢者人口における男女比を踏まえると、女性会員の拡大には大きな可能性がある。 会員規模の拡大とともに、介護、家事援助、子育て支援等の地域課題に対応する職域の開拓を通じて、新たな活路を見出そうとしている。地域包括ケアシステムにおいては、高齢者が生活支援サービスの担い手となることにより、当該担い手自身の健康維持や介護予防にも資する構想が掲げられており、シルバー人材センターはその一翼を担うことで、介護予防の観点からも組織の持続可能性を高めようとしている。 さらに、新入会員の入会動機として〈生きがい・社会参加〉が最も多いことを踏まえると、地域社会への貢献を実感できるこれらの仕事は、会員数の増加にもつながる可能性が高い。

人生100年時代を見据えた貢献

近年、シルバー人材センター会員の高齢化は著しく、2024年には会員の半数が75歳以上の後期高齢者となり、80歳以上の会員も2割に達する状況となっている。政府は、70歳までの就業機会の確保を目指しているが、今後は新規入会者の年齢上昇が予想され、会員の高齢化はさらに進展するものと見込まれる。その結果、加齢に伴う体力の低下を理由に〈就業しない(あるいは就業できない)会員〉が増加することが懸念される。報酬を伴う業務には従事

できないが、気⼼の知れた仲間との交流を理由に退会を望まない<稼がない会員>の処遇が新たな課題となっている。

同時に、地域社会においては、人生100年時代を見据え、社会参加の機会が限られる後期高齢者の〈居場所〉の整備が喫緊の課題となっている。後期高齢者を多数

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プロジェクト責任者:石橋智昭

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